二人のアパートオーナー

《Case1》

先日、当社へおいでになったA様(商社勤務)はアパート4棟を保有されていました。(うち、3棟は中古のアパート購入で1棟は新築)
保有資産の量もさることながら、上記のアパート購入に伴う負債も相当な額になります。
ご相談の主旨は「土地を購入してもう一棟アパートを取得したい」とのことであります。
当然アパート取得にかかる事業資金は借入となるため「投資効率」が高くなければ資金調達ができません。

【A様のご相談内容】
*28坪の土地に「木造三階建共同住宅」を新築…
*間取「どんなに狭くても良い」4世帯×3階=12世帯入らないか…
(結果としては当社の提示プランは8世帯の設計が限度でした:建築基準法など遵守)

【計画の趣旨】
*広い間取りよりも、狭い部屋で数を多くしないと「投資効率(利回り)」が期待値に届かない
*狭い部屋でも「適正賃料」の設定で空室の心配はない…
*部屋数が多くなることで、一室が空室になっても「空室率」それほど上がらずリスク分散ができる…
*多少金利が高くても地方銀行の「アパートローン」で資金を調達する予定…

《Case2》

現在商談中のB様(電機メーカー勤務)は、お父様保有の土地(55坪)に初めてアパートを建築する計画を検討されています。

【B様のご相談内容】
*近隣でアパートがたくさん建っているので、空室リスクが心配…
*間取はどうしたら良いか…(不動産賃貸の大手会社からヒアリング)
*入居者に好まれる内装・住宅設備機器はどのようなものか…
*金利の動向が気になる…

【計画の趣旨】
*当該地域では1Roomよりも1LDKの稼働率が良好⇒当初予定の「8世帯×1K」を「6世帯×1LDK:1世帯の延べ面積32㎡/ロフト付き」に変更
*壁・屋根などの素材は、なるべくメンテナンスフリーの素材⇒高額な素材を選択…
*入居者に選ばれるデザイン・仕様・設備・素材選びの結果、建築費は当初予定よりも増額となり「利回り」は低くなってしまった…
*史上空前の低金利時代の今、「固定金利」の期間をなるべく長く(おそらく10年)して、信用金庫から調達予定…

A様とB様、「アパートを建てる」という共通した目標に進んでいますが、基本方針・考え方で対極に立つ二つの計画だと思います。

立地条件やお客様の経済的背景が異なっていますから、一概にどちらが正しいというような結論は申し上げることが出来ません。
「短期」ではA様の考え方で「利回り追求」も可能と思われますが、長期では「狭小間取」の需給状況の変化によって収入減少という課題と向き合う必要に迫られる可能性があります。
一方、短期では投資効率(利回り)があまり高くない方針を選択されたB様の考え方は、競争相手に差別化した建物(間取り・仕様など)で対応することが可能となり、不動産経営の「安定性(安全性)」という視点でより「長期」を展望されていると考えられます。

何事も計画が大切ですね…
大きな資金投資が必要なアパート経営についてはなおさらのこと、その土地の立地条件(入居者=お客様の動向)/アパート建築の目的/財務バランスと健全なキャッシュフローなど、様々な角度から計画を検証し最適なプランを策定していただきたいと存じます。

「地盤調査と基礎工事」の重要性(コラム:建築知識編)

一昔前まで木造建築物で地盤調査をするケースは稀でした。

地耐力(建物を支える地盤強度)が不十分な土地に通常の布基礎で施工したケースや工事業者の過失(故意)で基礎工事が不適切なケースが存在し、「建物が傾いてしまった」「基礎と土台の間に隙間がある」など危険な状態が露見される事例が相次いだ結果、平成 12 年(2000 年)の建築基準法改正で木造アパートの「地盤調査は事実上義務化」されることとなりました。

調査の方法でポピュラーなのは「スウエーデン式サウンディング試験(SWS)」というもので、検査にかかる時間(1 日)や費用(5 点調査で 5 万円~)が他の調査方法よりも手頃なことがこの検査法が多用されている理由と考えられます。

調査の結果、地耐力不足という結果が出た場合、必要に応じた地盤強度の補強を行う必要があります。
(地上から見ることのできない地層はとても微妙です。道路を挟んだ土地では地盤補強が必要でこちら側は地盤補強不要というケースも多くあります)

次に地盤補強の方法と予算(一般住宅のケース:概算)です。
必要な地盤強度が出る地層までの深度によってその方法は大まか下記の 3 種類

  • ① 2M までの深度で必要な強度が得られる場合⇒「表層改良工法」一般住宅で 30~50 万
  • ② 2M~8M⇒「柱状改良工法」一般住宅で 70~100 万
  • ③ 30M まで⇒「鋼管杭工法」(杭打ち工事)一般住宅 100~150 万

かかる費用は深度が深くなるにつれて高額で大掛かりな工事になっています。(アパートで規模が大きくなると一般住宅の費用よりも高額になる)

地盤補強を済ませ、いよいよ基礎工事が始まります。
建築以外の場面でも「基礎」と「土台」の重要性は広く引用されている通り、建築工事に関しては当然のこととして最重要箇所の位置付になります。

基礎の材料となる「鉄筋」と「コンクリート」は基準を満たした素材と工法で施工する必要があります。現在では公的な第三者機関によって素材と工法をチェックする「配筋検査」が行われ欠陥住宅を抑制するシステムができています。

配筋検査⇒中間検査⇒完了検査⇒「検査済証」取得までのプロセスは昨今「必須条件」となりつつあり、「銀行融資」の実行時/当該不動産の譲渡時/「住宅瑕疵保険」の加入時にもこれらの検査をクリアした証明が必要となっています。

記載の事項は「手続きの煩雑さ」「費用の増加」など一見ネガティブなプロセスに思われがちですが、悪意のある工事業者の駆逐・欠陥工事の被害軽減という社会要請に応える制度として現在ではすっかり定着しており、震災大国における建築工事の品質向上と私たちの暮らしの安全という視点からも健全な進化と言えるのではないでしょうか...

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